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バイオ炭とは?メリット・デメリットや活用事例を紹介

更新日:2025.7.9

バイオ炭とは?

近年、持続可能な農業や環境保全への関心が高まる中で、「バイオ炭」という言葉を耳にする機会が増えました。バイオ炭とは、木材やもみ殻、農作物の残さといった有機物を、酸素が少ない状態で熱分解して作られる炭のことです。

通常の燃焼とは異なり、高温で酸素を遮断して焼く「炭化」処理によって、炭素が豊富に含まれる安定した固形物が得られます。この特性から、土壌改良資材や温室効果ガスの削減手段として注目を集めており、世界各国で農業・環境分野での利活用が進められています。

バイオ炭のメリット

土壌の改良効果を期待できる

バイオ炭は多孔質な構造を持ち、スポンジのように水分や養分を保持しやすい性質があります。これを土壌に混ぜ込むことで、作物の根張りを良くし、収量向上や肥料の効率的な利用につながります。土壌の保水性・通気性を高め、健全な土壌環境を育む効果が期待できます。

環境保全に貢献できる

バイオ炭の最大のメリットの一つは、地球温暖化対策に貢献できる点です。バイオマスは成長過程で大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収しますが、通常は分解されると再びCO2として大気中に放出されます。しかし、バイオ炭として炭素を土壌中に固定することで、CO2を長期間貯留できる「炭素貯留材」としても有効です。また、土壌中の微生物環境を整えることから、土壌劣化や水質汚染の軽減にも寄与します。

堆肥等に比べて扱いやすい

バイオ炭は堆肥と異なり、悪臭が少なく、運搬や保管の際に衛生的で扱いやすいのも利点です。また、品質が安定しており長期保存が可能なため、必要なときに必要な量だけ使えるのも現場で重宝される理由の一つです。

J-クレジット制度による収益化ができる

日本には、温室効果ガス排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する「J-クレジット制度」があります。バイオ炭の土壌施用によって固定される炭素量は、この制度の対象となり、クレジットとして企業などに販売することで収益化も可能です。脱炭素経営の一環として導入する企業も増えています。

バイオ炭のデメリット

過剰に用いると土壌がアルカリ性に傾く

バイオ炭のpHは一般に高めで、特に木材を原料としたものなどはアルカリ性が強い傾向にあります。土壌に過剰に投入すると、土壌のバランスが崩れ、作物の生育に悪影響を与える可能性があります。土壌の状態や作物の種類に合わせて、適量の判断と事前の土壌分析が重要です。

初期投資が必要

バイオ炭の製造を検討する場合、炭化装置の導入や、安定的な原料確保、保管設備などには一定の初期費用がかかります。導入効果や利用規模に応じた投資判断が求められます。

J-クレジット制度を用いる場合は手間がかかる

J-クレジット制度を利用して収益化を図る場合、クレジット申請には、施用量や炭素含有量、土壌条件などの詳細な記録や報告が必要となります。一定の管理労力が伴うため、導入を検討する際にはその手間を考慮に入れる必要があります。

バイオ炭の活用事例と今後の可能性

バイオ炭は、国内外で多様な分野での活用が進んでいます。日本国内では、果樹園や水田、茶畑などでの施用事例が増えており、収量改善や病害抑制の報告もあります。さらに、飼料への添加や、建材・舗装材への応用、浄水フィルターとしての用途など、農業以外の分野でも活用が進んでいます。

近年では、地域の未利用バイオマスを活用した「地域循環型モデル」としての導入も注目されており、地球温暖化対策と地方創生を両立するツールとしての期待が高まっています。バイオ炭のさらなる研究と普及は、持続可能な社会の実現に向けた重要な鍵となるでしょう。

バイオ炭の作り方

バイオ炭の作り方は、原料や規模によって様々です。ここでは、いくつかの代表的な炭化装置を紹介します。

無動力炭化平炉

「無動力炭化平炉」は、電力を使わず自然通気だけで炭化が行える装置です。導入コストが比較的低く、農家や地域団体などでも導入が進めやすいのが特徴で、小規模な利用や実証に適しています。

可搬型密閉式BC炭化ユニットW&S

「可搬型密閉式BC炭化ユニットW&S」のようなコンテナ型で密閉性の高い炭化装置は、現場での炭化を可能にします。煙の排出を最小限に抑え、均一で高品質なバイオ炭が得られるため、炭素固定や販売を前提とした事業規模での利用に適しています。

小型もみ殻炭化装置

その名の通り、「小型もみ殻炭化装置」は、もみ殻などの細かいバイオマス専用の小型装置です。家庭菜園や小規模農業での活用が見込まれ、取扱いも容易で、導入のハードルが低い点が魅力です。

まとめ

バイオ炭は、農業の生産性向上や環境保全、さらには脱炭素経営の推進において、多面的な価値をもつ資材です。土壌改良効果、環境貢献、扱いやすさ、J-クレジット制度による収益化といったメリットがある一方で、過剰な施用による土壌のアルカリ化、初期投資、J-クレジット制度利用時の手間といったデメリットも存在します。

バイオ炭を有効活用し、その効果を最大限に引き出すためには、適切な知識と管理が不可欠です。当社のような環境分析会社では、土壌分析、肥料分析、そしてバイオ炭自体の品質(例えば、炭素含有量やpH、重金属など)の分析を通じて、お客様のバイオ炭導入をサポートしています。また、活性炭としての利用を検討されている場合は、その吸着性能評価も可能です。

地域資源の有効活用やカーボンクレジットとの連携によって、バイオ炭の可能性はますます広がっています。持続可能な未来に向けて、バイオ炭の活用を身近な選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。そして、その際にはぜひ当社の分析サービスをご活用ください。

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