コラム

コントロールバンディングのやり方は?クリエイトシンプルとの違いも解説!

更新日:2024.2.7

日本国内では、平成28年6月1日より労働安全衛生法に基づき、全ての業種、企業規模において化学物質を取り扱う事業場がリスクアセスメントを実施することが義務化されました。化学物質の取り扱いや職場でのリスク管理のための手法としてコントロールバンディングがあります。

厚生労働省ではコントロールバンディングの簡易ツールの提供を通じて、リスクアセスメントの実施を推進しています。しかしながら、その取り組み方について分からないということも多いでしょう。ここではコントロールバンディングの具体的な手順を解説し、比較的新しいリスク管理の手法で、比較されることの多いクリエイトシンプルとの違いについても触れていきます。

コントロールバンディングとは?

一般的なリスクアセスメントは、専門的な知識や手法、詳細なデータが必要となり、時間や費用が掛かります。コントロールバンディングは、化学物質の取り扱いに特化したリスク管理手法の一つで、さまざまな業種の企業のリスクアセスメントの手法として利用されています。特に、多様な化学物質を取り扱っている企業や、新しい化学物質や製品を頻繁に導入している企業は、各物質についての詳細な曝露濃度の測定やリスク評価が難しいため、コントロールバンディングの手法が有効であると考えられます。

さらに、ばく露濃度のデータが不足している場合や、特定の化学物質のばく露限界値が未確定の場合でも、この手法はリスク評価が可能です。特に中小規模の事業場においては、効率的で実践的な方法としてコントロールバンディングが注目されています。

コントロールバンディングとクリエイトシンプルの違い

リスクアセスメントを進める手法として、近年はクリエイトシンプルという手法が活用されています。リスクアセスメント行う上で、労働者の化学物質へのばく露濃度等を測定しなくても使用できるという点では共通点がありますが、コントロールバンディングは、化学物質の有害性やばく露の可能性についてリスクレベルを決定し、あらかじめ決められた各リスクレベルの対処方法を実施していきます。特に化学物質のばく露リスクに特化していることが特徴です。

一方クリエイトシンプルは、作業の種類、使用する化学物質の情報、作業条件などからリスクを推定する方法となっています。次の点がコントロールバンディングとの主な違いとして挙げられます。

 ・有害性の程度として曝露限界値を用いていること

 ・取扱量単位が細分化されていること

 ・作業条件(含有率、換気、作業時間、保護具等)の効果を考慮していること

現時点ではクリエイトシンプルは取扱量が最大でおおよそ一斗缶までであるため、取扱量が多量の場合は厚生労働省版コントロールバンディングが適しているが、中量よりも少ない場合は、対策シートが出力されないものの、クリエイトシンプルの方が利便性が高いのではないかと考えられる。

クリエイトシンプルについて詳しく見る

 

コントロールバンディングのメリット

コントロールバンディングの大きなメリットの一つは、専門的な知識がない人でもリスクアセスメントの準備に取り組むことができる点です。さらに、この手法を利用する場合、具体的な化学物質の濃度測定やばく露限界値の詳細な測定が不要となるため、迅速かつ効果的にリスク管理を進めることが可能です。これにより、時間を大幅に節約しながら、安全な作業環境の確保が可能となります。

コントロールバンディングのやり方

コントロールバンディングは、化学物質のリスク管理のための簡易的な方法の一つであり、対象となる化学物質についてGHS区分情報に基づく有害性レベル・形状(液体又は粉体)・取扱温度・取扱量から、作業者のばく露濃度を推測します。一般的な進め方は以下のステップに基づいています。

有害性の評価:

利用されている化学物質やの物質安全データシート (MSDS/SDS) や文献から有害性情報を収集します。収集した情報からGHS分類区分の評価を行います。

取扱量の評価:

取扱量は3段階で評価します。
液体の場合は、kL(多量)、L(中量)、mL(少量)の3ランクで評価。
固体の場合は、ton(多量)、kg(中量)、g(少量)の3ランクで評価。

揮発性・飛散性の評価:

SDS情報から化学物質の沸点や形状に基づき、揮発性・飛散性を3段階でランク付けします。

有害性ランクに基づくリスクレベルの決定:

調査した有害性、揮発性、取扱量の情報を元にAランクはリスクレベル1、Bランクはリスクレベル2、Cランクはリスクレベル3、DおよびEランクはリスクレベル4に対応します。

措置の実施と評価:

選択された措置を実施。措置の効果や適切さを定期的に評価・検証し、必要に応じて手順を見直します。

適切な措置の選択:

 ランク付けを基に、適切なリスク管理策や保護措置を選択します。

 例:リスクレベル1の場合は基本的な換気で十分、リスクレベル4の場合は特別な保護具や専用の排気設備が必要など。

継続的なモニタリング:

リスクの変動、新たな危険因子の出現、措置の効果などを定期的にモニタリングします。必要に応じてリスクアセスメントや措置を更新します。

コントロールバンディングの注意点

コントロールバンディングを利用する際に注意すべき点は、危険性の評価やばく露の評価において、SDS等の情報は正確で最新の情報を収集することが非常に重要であるということです。この情報の正確性がコントロールバンディングの成果に大きく影響します。さらに、企業の作業環境や使用する物質、技術が変化する可能性を考慮し、定期的なリスクの再評価や評価方法自体の見直しも行うべきです。

コントロールバンディングは一つの手法に過ぎないため、他のリスク評価方法と組み合わせることで、より幅広くリスクを管理することが望まれます。

厳密な測定をするなら東海テクノへ!

企業がリスクアセスメントを進める際に、コントロールバンディングは具体的な化学物質の濃度測定やばく露限界値の詳細な測定が不要で、専門知識が少なくても利用できる迅速かつ効果的にリスク管理を進めることが可能な手法として利用されています。

しかしながら詳細なリスク評価や特定の状況に最適な措置の提供には限界があります。この部分については専門家や環境測定を組み合わせて評価していくことで、企業が従業員を守るという観点において、より良いリスクアセスメントの実施につながると考えます。

リスクアセスメントを実施する際の環境測定や、2024年4月から専任が必要な化学物質管理者の選任に向けた専門的講習については、当社でもお手伝いができる部分ですのでお気軽にお問い合わせください。

化学物質リスクアセスメントについて詳しく見る

コラム

Column