化学物質管理者は国家資格?資格の難易度から取得方法まで徹底解説
「化学物質管理者」って国家資格なのか?というと、「化学物質管理者」は国家資格ではありません。しかしながら「化学物質管理者」の選任が義務化されたことに伴い、早く資格取得しなければならない、でもどうすれば良いかわからないとお悩みを抱える企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
このコンテンツでは「化学物質管理者」の資格取得方法から難易度まで徹底解説していきます。さっそく「化学物質管理者」の難易度から確認していきましょう!
1. 「化学物質管理者」は国家資格ではない
化学物質管理者は国家資格ではなく、化学物質管理者選任が必要な事業場が、厚生労働大臣が示す内容に従った専門的講習を修了した者等のうちから選任します。
選任の要件についてリスクアセスメント対象物の製造事業場においては、専門的講習の修了者を選任する必要があります。
リスクアセスメント対象物の取扱い又は譲渡提供を行う事業場(製造事業場以外の事業場)においては、講習修了者であることは必須ではなく、化学物質の危険性・有害性等に関する知識及び経験を有すると認められる者であればよいとされています。
そのため、資格取得のための試験などは規定されていませんので、専門的講習の修了証書を取得する難易度はそれほど高くないでしょう。
2. そもそも「化学物質管理者」とは
令和4年5月に労働安全衛生法が改正され、新たな化学物質規制の体型が示されました。この新たな体系では「化学物質管理者」によるリスクアセスメントの実施と、その結果に基づく措置が求められています。
「化学物質管理者」とは、労働安全衛生法に基づき化学物質の取り扱いに関するリスクアセスメントを行い、その結果に応じて必要な措置を講じることができる者のことです。
「化学物質管理者」は、労働安全衛生法第57条の2に規定された「化学物質等の取扱いに関する技術的知識及び経験を有する者」と同義であり、化学物質等の危険性や取扱い方法について、十分な知識と経験を有する者をいいます。具体的には次のような要件が考えられます。
・化学物質等の製造、取扱い、保管、廃棄に関する業務に従事した経験がある者
・化学物質等の安全衛生に関する資格を有する者
・化学物質等の安全衛生に関する研修を受講した者
リスクアセスメント対象物を製造、取扱い、または譲渡提供をする事業者は、業種・規模要件なしに「化学物質管理者」の選任が必要です。
3. 化学物質管理者になるための要件
化学物質管理者に選任されるための資格要件は「化学物質の管理に係る技術的事項を担当するために必要な能力を有すると認められる者」であり、基本的にそれは事業者の裁量によります。ただし、リスクアセスメント対象物の製造事業場とそれ以外の事業場では、下記の通り選任のための要件が異なります。
3-1 リスクアセスメント対象物の製造事業場
リスクアセスメント対象物の製造事業場においては、化学物質管理者に選任される者は厚生労働大臣が示す内容に従った専門的講習を受けていなければなりません。また、事業場内の労働者から選任する必要があります。
3-2 リスクアセスメント対象物の製造事業場以外の事業場
一方、リスクアセスメント対象物の製造事業場以外の事業場では、専門的講習受講等の資格要件はないものの、専門的講習の受講が推奨されています。化学物質管理者に選任されるものの要件としては、事業場の特性を十分に考慮した上で、既存の労働安全衛生法の枠組みで規定されている衛生管理者、安全管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、作業環境測定士、作業主任者など、更に化学物質について専門的な知識を有するものが候補となりますが、専門的講習では具体的な管理手法を学ぶことが出来るため、化学物質管理者に選任される者は専門的講習の受講が望ましいでしょう。
4. 化学物質管理者資格の取得方法
化学物質管理者に選任される者は厚生労働大臣が示す内容に従った専門的講習を受講することを、リスクアセスメント対象物の製造事業場においては義務付けされており、リスクアセスメント対象物の製造事業場以外の事業場では推奨されています。専門的講習の内容は次の通りです。通常、リスクアセスメント対象物の製造事業場向けの専門的講習は2日間講習、リスクアセスメント対象物の製造事業場以外の事業場向けの講習は1日間講習となります。
化学物質管理者の専門的講習(リスクアセスメント対象物の製造事業場)
科目 | 範囲 | 時間 |
---|---|---|
【講義】化学物質の危険性及び有害性並びに表示等 | 化学物質の危険性及び有害性 化学物質による健康障害の病理及び症状 化学物質の危険性又は有害性等の表示、文書及び通知 |
2時間30分 |
【講義】化学物質の危険性又は有害性等の調査 | 化学物質の危険性又は有害性等の調査の時期及び方法並びにその結果の記録 | 3時間 |
【講義】化学物質の危険性又は有害性等の調査の結果に基づく措置等その他の必要な記録等 | 化学物質のばく露の濃度の基準 化学物質の濃度の測定方法 化学物質の危険性又は有害性等の調査の結果に基づく危険又は健康障害を防止するための措置等及び当該措置等の記録 がん原性物質等の製造等業務従事者の記録 保護具の種類、性能、使用方法及び管理 労働者に対する化学物質管理に必要な教育の方法 | 2時間 |
【講義】化学物質を原因とする災害の発生時の対応 | 災害発生時の措置 | 30分 |
【講義】関係法令 | 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)、労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)及び労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)中の関係条項 | 1時間 |
【実習】化学物質の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置等 | 化学物質の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく労働者の危険又は健康障害を防止するための措置並びに当該調査の結果及び措置の記録 保護具の選択及び使用 | 3時間 |
化学物質管理者の専門的講習(リスクアセスメント対象物の製造事業場以外)
科目 | 範囲 | 時間 |
---|---|---|
【講義】化学物質の危険性及び有害性並びに表示等 | 化学物質の危険性及び有害性 化学物質による健康障害の病理及び症状 化学物質の危険性又は有害性等の表示、文書及び通知 | 1時間30分 |
【講義】化学物質の危険性又は有害性等の調査 | 化学物質の危険性又は有害性等の調査の時期及び方法並びにその結果の記録 | 2時間 |
【講義】化学物質の危険性又は有害性等の調査の結果に基づく措置等その他の必要な記録等 | 化学物質のばく露の濃度の基準 化学物質の濃度の測定方法 化学物質の危険性又は有害性等の調査の結果に基づく危険又は健康障害を防止するための措置等及び当該措置等の記録 がん原性物質等の製造等業務従事者の記録 保護具の種類、性能、使用方法及び管理 労働者に対する化学物質管理に必要な教育の方法 | 1時間30分 |
【講義】化学物質を原因とする災害の発生時の対応 | 災害発生時の措置 | 30分 |
【講義】関係法令 | 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)、労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)及び労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)中の関係条項 | 30分 |
また、リスクアセスメント対象物の製造事業場対象の専門的講習においては、下記の条件で講習の一部免除が認められています。
免除を受けることができる者 | 科目 |
---|---|
有機溶剤作業主任者技能講習、鉛作業主任者技能講習及び特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習を全て修了した者 | 化学物質の危険性及び有害性並びに表示等 |
第一種衛生管理者の免許を有する者 | 化学物質の危険性又は有害性等の調査 |
衛生工学衛生管理者の免許を有する者 | 化学物質の危険性又は有害性等の調査 |
※化学物質管理者テキスト(厚生労働省)より抜粋
リスクアセスメント対象物の製造事業場において化学物質管理者に選任されるためには、上記専門的講習を受講する必要があります。また、リスクアセスメント対象物の製造事業場以外の事業場において化学物質管理者に選任されるには、上記専門的講習を受講することが推奨されています。
専門的講習は公的機関または民間の企業においても実施されており、受講するための条件は特に規定されていません。しかしながら、化学物質管理者は新たな化学物質規制の体系の中核となる存在であり、化学物質の安全な取り扱いや労働者の健康保護に重要な役割を担うことから、化学物質等の取扱いに関する技術的知識及び経験を有する者が望ましいでしょう。
5. 化学物質管理者資格取得には、東海テクノ主催の専門的講習がおすすめ
作業環境測定をはじめ、リスクアセスメントの構築サポート事業を行う株式会社 東海テクノ(本社:三重県四日市市)では、化学物質管理者の選任要件を満たすための厚生労働大臣が示す内容に従った専門的講習を随時開催しています。
労働衛生コンサルタントの資格保有者が講師を勤め、長年に渡る経験、また専門的な視点から化学物質管理者に必要となる要件を分かりやすくお伝えします。詳細はホームページにて案内されていますので、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。