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バイオスティミュラントとは?農薬や肥料との違いも解説

更新日:2024.4.26

「バイオスティミュラント」という言葉を知っていますか?

「バイオスティミュラント」は植物や土壌に対してより良い生理状態をもたらす様々な物質や微生物を指します。

持続可能な農法を目指す一歩として、バイオスティミュラント資材を栽培に活用することが農業界でブームとなっています。

この記事を読んでいただければバイオスティミュラントの基本的な考え方が身につくはずです。さらに今バイオスティミュラント資材を実際に栽培に活用しようと思っている方は活用方法の参考にしてもらえるはずです。

また、バイオスティミュラント資材の開発においてもバイオスティミラント資材の評価方法を分析会社の視点でご提案もしていますので是非最後まで読んでください。

では、さっそくバイオスティミュラントの基礎から確認していきましょう。

バイオスティミュラントとは

バイオスティミュラントとは、日本語で「生物刺激剤」と呼ばれており、植物や土壌に対してより良い生理状態をもたらす様々な物質や微生物を指します。これらは植物やその周辺環境が本来持つ自然な力を活用し、植物の健全さやストレスへの耐性、収量と品質、さらには収穫後の状態や貯蔵性に良好な影響を与えるとされています。

近年、ヨーロッパを中心に世界中で注目を集めているこの新しい農業資材カテゴリーは、持続可能な農業への関心の高まりとともに、その重要性が再認識されています。

バイオスティミュラントは化学肥料や農薬とは異なり、植物の自然な成長プロセスをサポートし、植物がより健康に成長するための環境を提供することを目的としています。

このように、バイオスティミュラントは現代農業において重要な役割を果たす、自然との共生を目指すための鍵となる資材です。

バイオスティミュラントと農薬・肥料・土壌改良材の違い

現状、バイオスティミュラント資材は日本の既存の法的範疇に収まらないといわれています。

下記の表はバイオスティミラントとその他資材の比較表です。

種類 主な法律 主な効果や定義
バイオスティミラント 明確には該当なし 非生物的ストレスの緩和
(明確な定義が定まっていない)
農薬 農薬取締法 殺虫・殺菌
肥料 肥料取締法 土壌に化学変化をもたらす
土壌改良材 地力増進法 土壌の物理的・化学的・生物的性質に変化をもたらす

日本におけるバイオスティミュラントの位置づけは、他の農業資材とは一線を画す特殊なものです。

農薬は病害虫や雑草の防除を目的とし、肥料は植物に栄養を供給し土壌に化学的変化を促すもの、土壌改良剤は土壌に様々な変化をもたらすものと定義されていますが、バイオスティミュラントはこれらのいずれのカテゴリーにも当てはまりません。

バイオスティミュラントが期待される主な効果は、非生物的ストレスの緩和にあります。肥料や農薬・土壌改良材等の資材のサポートをする役割と言い換えることができるかもしれません。

バイオスティミュラントの市場規模

バイオスティミュラントの市場規模は、今後数年間で急速に成長すると予想されています。 2028年には10.9%の年間複合成長率(CAGR)で52億5,000万米ドルに成長すると予想されます。この成長の背後には、持続可能な農業への世界的な需要の増加があります。

参照:https://www.japanbsa.com/biostimulant/definition_and_significance.html

国連が掲げる2030年の持続可能な開発目標(SDGs)では、特に持続可能な農業の推進が重視されています。これは、世界的に食料安全保障と持続可能な食品生産システムを実現するための重要なステップです。バイオスティミュラントの使用は、この目標達成に向けた核心的なアプローチの一つです。化学肥料や農薬の使用を抑えつつ、ストレス条件下でも作物を健全に育てることが可能になります。このようにして、バイオスティミュラントは持続可能な農業の実現をサポートし、その過程で市場の成長を牽引しています。

この市場の拡大は、環境に配慮した農業実践に対する意識の高まり、食料の安全性と品質への需要増加、そして農業における化学物質依存度の低減への動きなど、複数の要因によって支えられています。バイオスティミュラントの将来性は、これらのグローバルトレンドと密接に関連しており、今後も市場の成長が期待されます。

バイオスティミュラントに注目が集まっている背景

バイオスティミュラントへの関心が高まっている理由は、地球規模で直面している複数の農業と環境に関する挑戦に対する解決策としてその可能性が見いだされているからです。

具体的には下記のとおりです。

人口増加と農地の限界

世界の人口は2050年に今より20億人以上増えて95億人に達すると予想されていますが、農業に利用可能な土地は約15億ヘクタールと限られています。限られた土地で効率的に食糧供給を行うためにバイオスティミュラント資材の活用が求められています。

気候変動の影響

地球温暖化や気候変動は、作物に対し強いストレスの原因となり結果として収量の低下や食料確保の問題を引き起こすことがあります。バイオスティミュラント資材を活用することで気候の変化等のストレス耐性が向上するといわれています。

日本の農業課題

日本では農業従事者の高齢化や担い手不足が顕著な問題となっています。限られた労働力で効率的に、かつ経済的に収益を上げるためにバイオスティミュラント資材を活用し生産性をあげることが求められています。

これらの理由から、バイオスティミュラントは持続可能な農業実践における鍵となる技術として、世界中で注目を集めています。日本を含む多くの国で、様々な種類のバイオスティミュラント資材の研究、開発、および応用が進められており、農業生産性の向上と環境保全の両立を目指しています。

どのような種類があるのか次の章でご紹介します。

バイオスティミュラントの種類

バイオスティミュラントは、多岐にわたる種類があります。

これらの資材は、植物の成長を促進し、ストレス耐性を向上させる効果が期待されています。ここでは、主要なバイオスティミュラントの種類を紹介します。

種類 具体的な例 効果
腐植質、有機酸資材 腐植酸、フルボ酸 成長促進、栄養吸収改善
海藻及び海藻抽出物、多糖類 海藻エキス、特定の多糖類 成長促進、ストレス耐性向上
アミノ酸及びペプチド資材 植物・微生物由来のアミノ酸やペプチド 生理活動刺激、栄養吸収促進
微量ミネラル、ビタミン 必要な微量ミネラルやビタミン 生理活動促進、健康成長サポート
微生物資材 トリコデルマ菌、菌根菌、酵母、枯草菌、根粒菌など 土壌健康改善、栄養吸収・病害抵抗力向上
その他 動植物由来機能性成分、微生物代謝物、微生物活性化資材など 植物健康・成長サポート

まとめ

この記事では、持続可能な農法における革新的な解決策であるバイオスティミュラントに焦点を当てました。バイオスティミュラントは植物や土壌に有益な生理的影響を与える様々な物質や微生物であり、植物の健康と生産性を向上させることができます。

バイオスティミラント資材は肥料や農薬のサポートという位置づけなので短期間ではっきとした効果が見えにくいといったことがいわれています。

当社では土壌の分析や植物体の分析等を通じてバイオスティミラント資材の有効性の検証についてサポートしていきたいと考えています。

またバイオスティミラント資材についての環境・人体に関する有害物質等に分析も承ることができますので、ご相談をお待ちしております。

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