リケダン File.1(四日市分析センター ラボGr マニアックなMさん)

自慢のリジョケ(理系女子)

もらったパスは確実にアシスト

~~どの分野も突き詰めていくことが面白い~~

「将来は農業がしたい」と、中学生の頃から思っていたというMさん。そのきっかけは中学の体育でのサッカーだったとか。気が弱かったけど目立ちたいという思いでボールからは離れた場所にいたところエースストライカーからロングパスが!その後パスを繋いでゴールに繋がったときの「お前は何でそこにいるんだ?」ということに気付かされた『アシスト気質』。数多ある職業の中で農業という世界が攻めあぐんでいるエースストライカーの姿と重なったとのことで、何かアシストで面白い事が起こると確信し、大学は農学部を選択。その後縁あって当社へ入社。仕事も趣味も突き詰め続けている彼は、決して目立とうとはしませんが、しっかりアシストしてくれる頼りがいのあるMさんです。

掲載日 2018年11月13日

自慢のリケジョ回答者

四日市分析センター ラボGr

マニアックなMさん

分野の垣根をなくしていきたい
今行っている業務や研究について教えてください
Mさん : メインは飲料水の浄化に用いられる活性炭の規格試験をしています。粒度、密度、硬さなどの物性試験、溶出試験のほか、ヨウ素、フェノール、メチレンブルー色素など物質の大きさによる吸着性能を測定します。余談ですけど、活性炭は10gで1haもの表面積があるんですよ。
分析では他に、セルロースなど植物組成分析の技術相談窓口、分析結果の検証など、長くダイオキシン分析や有機分析の実務に携わってきた経験をふまえて、現在は無機分析の実務も行っています。

本当に多岐に渡る経験量ですね
Mさん : 確かに(笑) 石油・コークス、食品、粉体など外部専門機関への依頼や、自社で持っていない装置での分析やその他難分析についての相談、外注の管理も行っているのですが、その経験が今、役にたっていると感じています。
有機、無機分析の実務を広く網羅する若手の養成や、分野の垣根をなくし一元管理できる技術者になることを目標としています。

新規分野開拓に携わって更に面白さに気づいた
仕事をしていて楽しいことと辛いことは何ですか?
Mさん : 環境分析を主体としてきた弊社において、新規分野開拓の先駆けとなったのはセルロース分析かもしれません。当時バイオエタノール事業が政府主導で行われる機運があり、原料組成や製造工程の分析に着目しました。
そんな時、化学のプロ集団に紛れそこそこの社歴の農学部出身がポツンと「お前は何でそこにいるんだ」ですよね。再びロングパスを受け取りました。

植物の組成は主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンからなり、部位によりデンプンや脂肪、有機酸、タンパク質など多岐に渡ります。原料は木質というより草本を用いるのが主流で、その場合試験法は飼料分析法が適する、など三重大学生物資源学部の酵素学研究室で教えて頂きました。
まずは適当な試料を用いて試験を行い、外部機関で食品衛生法とのクロスチェックを行いました。植物性肥料の結果が合わず、先生に聞くと動物の毛が混じっている事が原因と分かりました。主成分のケラチンは動物性タンパク質であり、試薬との反応性がセルロースなどと似ており、正の誤差を生じていました。

環境分析は基本的に全量回収、完全反応といった化学実験の操作になりますが、植物は複雑な組成をしているため、絶妙な濃度で調製した試薬である程度反応させるなどの繊細な操作が必要でした。大学が持つ知識や知見は恐ろしく広大で深く、ひとつの悩みから原因物質を割り出し次々と解決していきました。

環境分析でもマトリックスが多い状況では困難なことがありますが、植物は始めから未知の混合物で、そこからセルロースなどといった糖が複雑に絡み合ったポリマーを測定するんですよ。化学のプロと植物のプロは全く違う世界にありました。同時に、農学の面白さ、ありがたさに気付きました。
最後に、日ごろ心がけていることがあれば教えてください
Mさん : やはり健康な体あっての仕事だと思いますので、なによりも安全第一の作業を心がけています。以前に安全衛生委員会の役を勤めさせていただき、活動の一環として労働基準協会が主催するKYT研修を受けたことがあります。悲惨な労働災害を目の当たりにし、それを何としてでも阻止しようという講師の方の安全に対する情熱に感銘を受けました。

分析ラボに潜む危険として、毒劇物や有機溶剤などの試薬を扱うことがあります。安全衛生委員会では、640物質ある通知対象物についてリスクアセスメントを行ないました。作業場ごとに使用試薬を抽出し、危険有害性、使用頻度、時間、保護具、換気設備について点数を付けて評価し、リスク評価中以上の作業について作業環境測定を行ないました。現場の状況を把握すること、作業者が作業の有害性について知ることができ有意義な結果が得られました。
しかしまだまだ危険が潜んでいます。あの講師の情熱を思い出しながら日々目を光らせています。
自慢のリケジョ

Rikejyo