PFAS(有機フッ素化合物)とは?健康への影響、規制の動向は?
最近、PFASや有機フッ素化合物などニュースで取り上げられるようになり、健康への影響が報道されています。有機フッ素化合物とは、炭素とフッ素の結合を持つ有機化合物であり、その総称をPFASと言います。
PFASの代表的なものとしてPFOSとPFOAがあります。PFOSとPFOAは、撥水剤、消火剤、コーティング剤等に用いられており、私たちの生活でも多くの場所で活用がされています。
ただ体内で蓄積されやすく、発がん性が有ることが知られており、健康上の被害も報告されていることから、不安が拡がり始めていますが、まずは正しくPFASについて知ることが重要です。
さっそく確認していきましょう。
PFAS(有機フッ素化合物)の特長と主な使用製品
PFASは、4700種を超える有機フッ素化合物の総称として知られています。この膨大な数の化学物質は、その独特な性質から様々な製品や産業に利用されてきました。PFASの主な特長として、耐水性、耐脂性、防汚性が挙げられ、これらの性質はPFASを高い効果で利用できる理由となり、多くの製品や産業分野での使用が進められています。
日常生活での使用
我々が日常的に使っている多くの生活用品にもPFASは使われています。以下はその一部です。
製品 | 用途 | 詳細 |
---|---|---|
フライパンや鍋 | 焦げつき防止 | 食材が鍋やフライパンにくっつくことを防いでいます |
食品容器包装 | 油濡れ防止 | 例として、ハンバーガーなどの包装自体が油で濡れるのを防いでいます。 |
化粧品 | 持続性・発色性向上 | 化粧品が皮膚によくなじむようになります |
防水スプレー | 撥水性向上 | 撥水性を持たせることで、雨などの水分から製品を守ります |
スマートフォンの 画面コーティング |
防汚性向上 | 指紋や汚れを防ぐため、スマホの画面には特別なコーティングが施されており、その中にはPFASが使用されています。 |
日用品以外での使用
PFASは日用品だけでなく、さまざまな産業分野でも活用されています。
具体的には:
・泡消火剤:火災現場での消火活動に利用されています。
・工業的研磨剤:金属や他の材料の表面を滑らかにするための研磨に使用されます。
・半導体製造:高度な技術が要求される半導体の製造過程でPFASの特性が活かされています。
このように、PFASはその特性を活かしてさまざまな製品や産業で広く使用されています。しかし、その普及とともに、環境や健康への影響に関する懸念も高まってきており、これらの点についての注意が必要となってきています。
PFAS(有機フッ素化合物)の健康への影響
PFASは日常生活や産業分野で多く使用されていますが、その環境や人体への影響についての懸念が高まっています。PFASの特性と、人体への影響について詳しく見ていきましょう。
「永遠の化学物質」としての特性
PFASは、自然界に放出された後、ほとんど分解されずに長期間存在し続けます。さらに、生物体に取り込まれると、体内に蓄積しやすい性質を持っています。これらの特性から、「フォーエバーケミカル=永遠の化学物質」と呼ばれています。
人体への影響
近年の研究により、PFASの健康への悪影響が明らかとなってきました。具体的な影響として以下のようなリスクが指摘されています
リスク | 詳細 |
---|---|
脂質異常 | 血中の脂質のバランスが崩れ、動脈硬化などのリスクが高まる可能性がある |
抗体反応の低下 | 免疫反応が弱くなり、感染症への抵抗力が低下する恐れがある |
腎臓がん | 長期的な摂取や蓄積が、腎臓がんのリスクを高める可能性がある |
乳児・胎児の成長 | 胎児期や乳児期の発育や発達に悪影響を及ぼす恐れがある |
加えて、乳がん、肝臓機能障害、妊娠高血圧、精巣がん、甲状腺疾患または機能障害、潰瘍性大腸炎などの健康リスクも報告されています。
PFAS(有機フッ素化合物)はどこから?
PFASは「永遠の化学物質」として知られ、環境や人体に長期間留まる特性があります。しかし、一体どのような経路で我々の身近な環境や体内に入ってくるのでしょうか。
水道水を通じた摂取
PFASは工場の排水などから土壌を汚染します。この汚染された土壌からPFASは地下水や河川水に浸透し、結果的に私たちが飲む水道水にも含まれることになります。多くの地域では水道水の浄化プロセスでこれらの化学物質を除去する技術が導入されていないため、水を通じてPFASを摂取する可能性が高まります。
食品を介した摂取
食品もPFASの摂取経路の一つです。PFASに汚染された土壌で育った農作物を食べることで、間接的にこれらの化学物質を摂取することがあります。また、食品包装や容器に使用されているPFASも、食品との接触を経て人体に取り込まれる可能性が指摘されています。
PFASの摂取経路は多岐にわたり、日常生活の中で無意識のうちに摂取してしまう可能性が高いことがわかります。このような背景から、PFASの環境や健康への影響についてのリスクを理解し、適切な対策を講じることが求められます。
PFAS規制の動向
PFASに関する規制動向について、ヨーロッパ連合(EU)と日本での状況に焦点を当てて解説します。
EUでの規制動向
近年、PFASに関する健康リスクが世界的に注目されるようになる中、特にEUでは積極的な規制動向が見られます。EUでは、現在PFAS全般を対象とする新しい規制案が進行中であり、具体的な内容や施行時期などに関する意見を求めて、2023年3月から9月までの期間でパブリックコメントの募集が行われています。この新規制は、2025年中に正式に発行される予定であり、その後、18ヶ月の移行期間を設けることが計画されています。更に、特定の産業や用途に対しては、5年または12年の猶予期間を設ける方針となっていますが、代替物質の存在の有無にかかわらず、一部のPFASは規制の対象となる可能性が指摘されています。
日本における規制状況
日本においてもPFASに関する規制が進められています。すでに2018年から、特定の有機フッ素化合物であるパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とパーフルオロオクタン酸(PFOA)の製造や輸入は、一部の例外を除き原則禁止されています。この動きは、国際的な取り組みや市民からの懸念を受け、日本国内でも健康や環境に対するリスクを最小限に抑える方向での対応が進められていることを示しています。
PFASの健康リスクへの対応は、世界的に深刻に捉えられており、規制強化の動きが加速しています。消費者としては、これらの動向を理解し、適切な選択をすることが求められます。一方、産業界としては、代替物質の開発や研究、そして現行の規制に対する適切な対応が不可欠となっています。
まとめ
PFASはその便利な特性から幅広く利用されてきましたが、その健康や環境への影響を真摯に受け止める必要があります。
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