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水道水におけるPFAS汚染の調査方法は?健康被害や対策についても紹介

更新日:2023.10.5

ニュースやSNSで話題になっているPFAS。特に水道水に含まれるPFASが注目され、多くの人々がその安全性について深刻な心配を抱えています。しかし、PFASとは一体何なのでしょうか?この物質はどのようにして私たちの健康に影響を与える可能性があるのでしょうか?そして、PFAS問題に対して、私たちはどのように対処すればよいのでしょうか?このコラムでは、これらの疑問から実際の対策まで、PFASに関するあらゆる情報を分かりやすく解説します。PFASの問題に関するあなたの不安や疑問、このコンテンツを通じて解決できるはずです。それでは、一緒にPFASについて詳しく見ていきましょう!

PFASとは

PFAS(ピーファス)とは有機フッ素化合物の総称で、構造的に水や油をはじき、熱に強い特性を持っており、生活用品の素材、工業、医療など、幅広い用途で利用されています。使用例の代表的なものとしては、防水加工されたテキスタイルやノンスティック調理器具、消火剤などがあげられます。

しかし、その便利な特性とは裏腹に、PFASには潜在的なリスクがあります。PFAS化合物の中でも、特にPFOA、PFOS、PFHxSの3種類は環境と健康への悪影響が指摘され、国際条約で製造・使用・輸入が禁止されています。それにも関わらず、それ以外のPFAS化合物は引き続き利用されているのが現状で、PFASによるリスクの全体像は完全には把握されていません。

「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFASは、環境や体内に長期間残留することが確認されています。これにより、さまざまな病気へのリスクが明らかとなっている一方で、多くはまだ研究段階にあります。このような背景から、特にEUを中心に、PFASに対する規制の動きが進展しています。

今各地でPFASが水道水に含まれているといったニュースが頻繁に報道されています。ではなぜ、PFASが水道水に含まれてしまうのか確認していきましょう。

PFASが水道水に含まれる原因

水道水にPFASが含まれる主な理由は、工場からの排水や、例えば米軍基地で使われる泡消火剤の漏れが指摘されています。これらから出たPFASは、土から地下水や川に移り、そこから我々の水道水に混入することがあります。その結果、私たちが気づかずにPFAS入りの水を飲んでしまう危険性があるため、健康への悪影響を引き起こすリスクがあるのです。

具体的には、工場排水や泡消火剤から漏れ出たPFASは、土壌を汚染します。汚染された土壌から、PFASが地下水に浸透し、その地下水がさらに河川や湖、そして水道水に流入することがあります。このような流れで、PFASは広い範囲の水供給に影響を与え、多くの人々の生活と健康にリスクをもたらしているのです。

実際2023年2月には、東京都の多摩地域で水道水に利用されていた井戸水からPFASが検出されるという報道があり、この報道により、水道水の安全性への懸念が更に高まって、社会全体での話題となるようになりました。

PFASが及ぼす健康への影響

PFASの健康への影響について、現在の研究では、動脈硬化の原因となる脂質異常症、腎臓がん、抗体反応の低下、乳児・胎児の成長・発達への影響など、特定の健康問題との関連性が示されています。他にも、乳がん、肝機能障害、妊娠高血圧症、精巣がん、甲状腺疾患または機能障害、潰瘍性大腸炎など、様々な健康問題との間に、限定的または示唆的なエビデンスがあります。血液中のPFAS濃度が一定の値を超えると、健康リスクが高まるとも指摘されており、子どもや妊婦では、より低い濃度であっても健康への影響が懸念されています。これらの情報は、PFASの健康リスクを理解し、今後の研究や対策を検討する上で、非常に重要です。

PFASと健康問題の関連は長らく疑問視されてきました。2022年には、全米アカデミーズの委員会が5000本以上の論文を分析し、PFASと健康問題との関連についてのガイダンスをまとめました。しかしながら、これまでの科学的なエビデンスはまだ十分ではないとされています。

国のPFAS対策は?

健康問題が指摘され、不安になる情報が次々と出てくる状況となる中、日本における対応がどうなのか。結論から言うとPFAS対策は現在検討中の段階にあります。世界的にも、PFASに関する対策はまだ始まったばかりで、どの国も具体的な方針を固めるのが難しい状況にあります。これは、PFASがどの程度の濃度で健康に影響を与えるのかについての科学的エビデンスがまだ不十分であるためです。

現在、日本では各地域によって環境省や地方自治体、水道事業者からPFASに関する調査結果が公表されています。これにより、一定の情報は公にアクセス可能となっており、市民もこれらの情報を確認することができます。しかし、水道事業者によるPFASの測定は、現状では義務ではなく、あくまで任意の行為です。これは、検査の負担や、基準が曖昧であることなどが背景にありますが、今後の対策の中で、測定を義務付けるかどうかが重要な議論のポイントとなります。

水道水におけるPFASの調査方法

国の対策はまだ不十分な状況ですが、健康への不安は増す一方です。自分の身を守るためには、水道水にどのくらいPFASが含まれるのか知ることから始める必要があるでしょう。
そんな水道水におけるPFAS汚染の調査は、正確かつ信頼性の高い方法が求められ、日本では、水質管理目標設定項目の検査方法(H15健水発第1010001号 固相抽出-LC/MS/MS法)に従って、分析が行われます。

簡単なフローを紹介すると、まずは調査対象となる水のサンプリングを行います。次にサンプル水に含まれるPFASを特定の溶媒と固相を用いて抽出し、抽出されたPFASをLC/MS/MS(液体クロマトグラフィー質量分析装置)に導入して、PFASの種類と濃度を特定します。分析には特殊な装置と複雑な操作が必要となるので、専門の業者に依頼するのが良いでしょう。

水道水におけるPFASの基準値

日本では水道水質の管理目標値が2020年4月に見直され、PFOSとPFOAについての管理目標値が設定されました。この値は、PFOSとPFOAの合計値で50ng/L(暫定)で、この基準を基に、水質の検査と管理が実施されています。2020年5月からは、同じ数値が水質環境基準の人の健康の保護に関する要監視項目にも加えられ、公共用水域でのモニタリングが開始されましたが、この環境基準値をさらに引き上げる必要があると考えられます。

その他のPFAS、特にPFHxSについては、POPs条約の対象物質として規制が検討されていますが、その他の多くのPFASはまだ検討の段階にすらありません。世界ではPFAS全体を対象にした規制が進められており、日本もこの動きに迅速に対応する必要があります。

まとめ

水道水におけるPFASの現状と対策について、本文では多角的に検討しました。PFASは、その環境への影響と人体への健康被害が懸念される化学物質の一つです。多くの用途で使用されてきたPFASですが、環境への長期的な影響や健康への悪影響が明らかになりつつあります。
水道水のPFAS汚染問題は、複雑で重大な課題として立ちはだかっています。PFASの健康への影響に関する科学的な証拠がまだ不十分な中、国際的な指針や基準も統一されていない状況で、各国は独自の基準や規制を設けて対処しようとしています。日本では、PFOSとPFOAに対する基準値が設定されていますが、これらの物質以外のPFASに対する具体的な対策はまだ始まっていません。

総じて、PFAS汚染に対する迅速かつ効果的な対策を講じるために、また健康被害への不安を少しでも早く払拭するためには、科学的な研究の進展を待たずに、予防原則に基づき、対策を進めていくべきと考えます。東海テクノは専門業者として公的試験はもちろん、PFASに関連する試験を幅広く実施することが可能です。PFAS関連試験が必要とお考えの場合、一度東海テクノに問い合わせしてみてはどうでしょうか。

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