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RoHS10 とは?物質から規制の背景まで解説!

更新日:2023.10.5

環境への配慮が世界中で高まる中、さまざまな産業界で使用される有害物質の規制が進められています。その中で欧州連合(EU)による有害物質の規制が強化されているのが「RoHS指令」です。一般的に「RoHS10」と呼ばれますが、「RoHS10」とは、RoHS指令で規制されている環境負荷物質6物質と、RoHS2.0指令で規制されている4物質の合計10物質のことをいいます。

スマートフォン、テレビ、パソコンなど、私たちの周りにはさまざまな電子・電気製品があり、私たちの生活を便利にしてくれますが、製造過程である種の有害な物質が使用されていることがあります。製品が壊れて捨てられるとき、これらの製品に使用されている有害物質が環境や私たちの健康に害を及ぼす可能性があるのです。そこで、ヨーロッパ連合(EU)は「RoHS指令」というルールを作りました。このルールは、電子・電気製品に含まれる特定の有害物質の使用を制限するもので、このルールに従って作られた製品は、環境や私たちの健康を守るために、特定の有害物質をなるべく使用していない、ということを意味します。

このコンテンツでは「RoHS10」における規制物質と、規制の背景についてご紹介していきます。早速「RoHS10」について詳しく確認していきましょう。

1.RoHS10とは?

RoHS10とは、さきほど書いたとおりRoHS指令で規制されている環境負荷物質6物質と、RoHS2.0指令で規制に追加された4物質の合計10物質のことをいいます。

RoHS指令はヨーロッパ連合(EU)が制定した指令で、私たちの日常に欠かせない電子・電気製品の中に含まれる特定の有害物質の使用を制限するものです。

後に指令は大幅に改正され、当初の規制6物質に加えて、新たな4物質が規制の対象として追加されました。これらの物質を合わせた10物質を「RoHS10」と呼びます。製造業者にとっては、これらの物質を制限された量以下に保つことが義務付けられており、製品設計や材料選定の際に、代替材料の導入や生産プロセスの見直しが求められています。

2.【 一覧】 RoHS10 指令規制対象有害物質

代替材料の導入や生産プロセスの見直しにあたって、どういった物質が対象になったのかも確認しておかなければなりません。「RoHS10」の規制物質に関する許容濃度とその主な用途に関する情報を、以下の一覧表にまとめました。規制物質の主な用途を示していますが、これらの物質はさまざまな製品や産業で広く利用されています。

規制物質 許容濃度 主な用途
鉛(Pb) 0.1wt% 蓄電池、金属の快削性向上のための合金成分など
水銀(Hg) 0.1wt% 蛍光灯、バッテリー、体温計など
カドミウム(Cd) 0.01wt% バッテリー、塗料、安定剤など
六価クロム(Cr6+) 0.1wt% 金属の防食コーティングなど
ポリ臭素化ビフェニル(PBB) 0.1wt% 電子部品の難燃剤など
ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE) 0.1wt% 電子部品の難燃剤など
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) 0.1wt% プラスチックの柔軟剤など
フタル酸ブチルベンジル(BBP) 0.1wt% プラスチックの柔軟剤など
フタル酸ジブチル(DBP) 0.1wt% プラスチックの柔軟剤など
フタル酸ジイソブチル(DIBP) 0.1wt% プラスチックの柔軟剤など

これらの10物質には、許容濃度上限が定められており、EU内でその上限を超える製品の製造や販売は許可されていません。注)一部適用除外あり RoHS指令はEUの規定であり、日本国内での違反に対する罰則はありません。しかし、日本製の製品がEUに輸出される際には、指令に違反していれば製品の回収や罰金が科せられる可能性があるため、EUの基準を理解し、遵守することが必要です。

3.RoHS指令が制定された背景

近年、私たちの生活に欠かせない電気・電子機器の消費が急速に増加しています。この電気・電子機器の普及とともに、関連廃棄物も増加の一途をたどっています。特にEU諸国では、廃電気・廃電子機器のうち約90%が適切に処理されず、結果として不適切な廃棄やリサイクルが行われていました。

これらの機器には、多種多様な化学物質が含まれています。 特に電気・電子製品の製造工程では、特定の化学反応を利用して生成される化学物質が用いられることが多いため、製品の寿命が終わり廃棄された際に、環境へと放出される問題が発生します。具体的には、不適切に処分された廃棄物から化学物質が浸出し、地下水を汚染するケースが問題となりました。それが健康や生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されています 。

このような背景から、化学物質の人体や環境への影響を最小限に抑えるため、ヨーロッパ連合(EU)はRoHS指令の制定に踏み切り、これによって有害物質の使用を制限し、私たちの健康や地球環境の保護を目指す動きが加速しました。

4.まとめ

今回のコラムでは、電気・電子製品に関連するRoHS10の概要、具体的な規制対象となる有害物質、そしてその制定背景について触れてきました。RoHS10とは、RoHS指令およびRoHS2.0指令で規制されている合計10種の有害物質を指す言葉であり、これらの物質は環境や人体への悪影響を防ぐためにEUでの使用が制限されています。不適切な処理によりこれらの有害物質が環境や私たちの生活に浸出することは、健康上のリスクや環境汚染を引き起こす可能性があります。RoHS指令が、これらのリスクを最小化し、持続可能な社会の実現を目指して制定されたことを理解することは、私たちの健康や地球の未来に直結する大切なテーマとなっています。

前述の通り、日本製の製品がEUに輸出される際には、指令に違反していれば製品の回収や罰金が科せられる可能性があるため、EUの基準を理解し、遵守することが必要です。当社ではRoHS10に対応した分析の実施が可能です。詳細はホームページからお気軽にお問い合わせ下さい。

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