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RoHS2とは?RoHS1との違いから改定の変遷まで徹底紹介

更新日:2023.10.5

RoHS指令とは、電子機器や電気機器に含まれる特定の有害物質の使用を制限するための欧州連合(EU)の法規制です。この有害物質として、制定時に6物質が指定され、改正指令(通称RoHS2)で4物質が追加され、合計10物質の使用が制限されています。つまり、RoHS2とは改正指令で追加された4物質を含めた10物質のRoHS指令を指します。このコンテンツではなぜ改正指令が出て、4物質が追加されたのか?また今後のRoHS指令はどうなっていくかまでご紹介いたします。

1.RoHS2とは

RoHS2をもう少し詳しく説明すると、欧州連合が電子機器や電気機器に含まれる特定の有害物質の使用を制限するための改正指令で、正式には【2011/65/EU】と呼ばれています。

この指令の改正過程は、2008年12月に欧州委員会から公表された改正案を経て、約2年間の協議の後、2011年7月1日にEU官報で公布されました。その後、2011年7月21日に改正RoHSが発効し、旧RoHS指令である【2002/95/EC】(通称RoHS1指令)は2013年1月2日に廃止。翌1月3日からは改正RoHS指令【2011/65/EU】(通称RoHS2指令)が適用となりました。

さらに、RoHS2指令は後にもう一度改正され、規制物質が6物質から10物質に拡大されました。この改正は、2015年6月4日に公布された「(EU)2015/863」官報によって行われ、2019年7月22日から適用されています。

RoHS2指令は、RoHS1指令に比べてさらに厳格な要件と範囲の拡大を取り入れたものであり、欧州連合における環境と人々の健康を守るための決意を強く反映しています。電子機器や電気機器の製造・販売に携わる企業にとって、このRoHS2指令の内容と意義を正確に理解し、適切に対応することが不可欠です。

RoHS2とRoHS1の違いとは

RoHS指令が初めて導入されて以降、技術の進化や環境問題への対応として、指令の内容は改正されてきました。それでは、具体的にRoHS2とRoHS1の主な違い、すなわち主な改正ポイントについて詳しく見ていきましょう。

対象製品の拡大

RoHS1では適用から除外されていたカテゴリ8(医療用機器)、カテゴリ9(監視・制御機器)がRoHS2で新たに対象となりました。さらに、カテゴリ11として「その他の電気・電子機器」が新規に追加されました。

対象製品カテゴリ
適用開始
1 大型家庭用電気製品 2006/7/1
2 小型家庭用電気製品 2006/7/1
3 IT機器及び遠隔通信機器 2006/7/1
4 民生用機器 2006/7/1
5 照明機器 2006/7/1
6 電動工具 2006/7/1
7 玩具、レジャー、スポーツ機器 2006/7/1
8 医療用機器 医療用機器 2014/7/22
体外診断用医療機器 2016/7/22
9 監視・制御機器 監視及び制御機器 2014/7/22
工業用監視・制御装置 2017/7/22
10 自動販売機 2006/7/1
11 上記カテゴリに入らないその他の電気・電子機器 2019/7/22

CEマークの製品への貼付

1回目の改正により、CEマーキング制度が導入され、EU市場への上市前にCEマークの貼付が必要となりました。加えて、適合宣言書や技術文書の作成、販売記録に関しては、10年間の保管が義務づけられています。

規制物質の拡大:

前述の通り2回目の改正で規制物質が拡大されました。具体的には、既存の6物質に4物質(DEHP、BBP、DBP、DIBP)が追加され、合計10物質となりました。

規制物質 許容濃度 備考
鉛(Pb) 0.1wt% RoHS1
水銀(Hg) 0.1wt% RoHS1
カドミウム(Cd) 0.01wt% RoHS1
六価クロム(Cr6+) 0.1wt% RoHS1
ポリ臭化ビフェニル(PBB) 0.1wt% RoHS1
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE) 0.1wt% RoHS1
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) 0.1wt% RoHS2
フタル酸ブチルベンジル(BBP) 0.1wt% RoHS2
フタル酸ジブチル(DBP) 0.1wt% RoHS2
フタル酸ジイソブチル(DIBP) 0.1wt% RoHS2

RoHS指令が始まった理由

RoHS指令の制定の背景は、1990年代後半から2000年代初頭の欧州での地下水の汚染問題に端を発しています。不適切な廃棄物処理により、特に鉛やカドミウム、水銀などの重金属が地下水に混入し、人々の健康や生態系に影響を及ぼす可能性が浮上しました。これを受け、欧州連合は製品の製造段階から有害物質の使用を制限し、環境汚染の予防を目的としたRoHS指令を2003年に制定、2006年から施行しました。

RoHS指令の変遷

欧州連合の環境保護や人々の健康を守るための取り組みを背景に、RoHS指令はその発効以来、継続的に改正され、規制の範囲や対象物質が増える形で「バージョンアップ」してきました。ここでRoHS指令の変遷に係る一連の流れについて整理します。

2003年2月13日:
初のRoHS指令が公布され、この指令は「RoHS1」と通称されました。この時点で、特定の有害物質として6物質が制限対象に指定されました。

2006年7月1日:
RoHS1が正式に施行され、1〜7、10のカテゴリの電気電子機器が対象とされました。

2008年12月:
欧州委員会によりRoHSの改正案が公表され、これを受けての協議が開始されました。

2011年7月1日:
約2年の協議を経て、改正されたRoHS指令が公布され、「RoHS2」として知られるようになりました。正式名称は【2011/65/EU】です。この改正では、規制の範囲が拡大され、特に医療機器や監視・制御機器などの新たなカテゴリが追加されました。

2013年1月2日:
RoHS1指令が廃止され、翌日からRoHS2が施行されました。

2015年6月4日:
RoHS2指令がさらに改正され、「(EU)2015/863」官報が公布されました。この改正で、制限物質が6物質から10物質に拡大されました。

2019年7月22日:
1〜10のカテゴリ以外の電気電子機器に対する規制が始まり、同時に新たに追加された4物質の含有制限が適用されました。

電子機器や電気機器の製造・販売に関わる企業は、改正を続けるRoHS指令のこれらの変遷をしっかりと把握し、適切な対応を続けていく必要があります。特に規制物質の種類と規制濃度を確認することの重要性は言うまでもありません。

5.まとめ

RoHS指令は、欧州連合が電子・電気機器の有害物質使用を制限するための重要な法令であり、RoHS2はその改定版として【2011/65/EU】として制定されました。RoHS1からの主な変更点としては規制物質の数や適用範囲の拡大が挙げられます。

1990年代後半から2000年代初頭の欧州の環境問題を背景に、RoHS指令の制定は製品の生産段階から環境への配慮を強化する欧州の姿勢を反映しており、改定によってその重要性は更に増しています。RoHS指令制定の経緯と改定内容を理解することは、電子機器や電気機器の製造・販売に携わる企業が適切に対応し、グローバルな環境と健康を守る上で不可欠なことであるのです。

当社ではRoHS指令に対応した分析の実施が可能です。詳細はホームページからお気軽にお問い合わせ下さい。

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