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RoHSとは?日本に関係があるの?対象物質も一覧で紹介

更新日:2024.10.4

RoHSとは?

RoHSとは「Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment」の略称で、直訳すると「電子・電気機器における特定有害物質の使用制限」を意味します。

この名称からもわかるように、RoHSは電子・電気機器に使用される特定の有害物質の含有量を制限する法規制です。

欧州連合(EU)によって2003年に制定され、2006年から施行されています。この制度の目的は、有害物質による環境への負荷を軽減し、人々の健康を守ることにあります。

廃棄された電子・電気機器から有害物質が環境に漏れ出ると、土壌や水質を汚染し、結果的に生態系や人間の健康に影響を及ぼす可能性があるため、これを防ぐための措置としてRoHS指令が制定されました。

制定の背景には、欧州での廃電子機器からの有害物質の流出問題や、長期的な環境保護の取り組みがあります。また、消費者の安全を考慮した商品の提供が求められる中、RoHS指令は企業にとっても、製品の安全性や環境への配慮を示す一つの指標としての役割を果たしています。

このRoHS指令に従わない製品は、EU市場への販売が認められません。これにより、全世界の製造業者やサプライチェーン全体に、RoHSの基準への対応が求められるようになりました。

RoHS指令は日本にも関係ある?

RoHS指令は、その発祥地である欧州連合(EU)の法的な枠組みとして制定されましたが、その影響は全世界に及んでいます。日本においても、この規制は無関係ではありません。

まず、多くの日本企業が欧州市場へ電子・電気機器を輸出しています。欧州への輸出を行うすべての企業は、RoHS指令に準拠している必要があります。これは、欧州内で販売する製品にRoHSの基準を適用しなければならないということを意味します。

したがって、日本製の製品でもRoHSの要件を満たしていないと、欧州での販売が認められません。

また、欧州以外の国や地域でも、RoHSに類似した規制を導入しており、国際的なビジネスの視点から見れば、RoHSの遵守は必須となっています。

また、日本におけるRoHSと類似した動きとして、J-MOSSが存在します。J-MOSSはRoHS指令と同じ6種の重金属類を対象に、特定製品への含有情報の提供が義務付けられました。

日本の企業や消費者も、これらの国際的な動向を理解し、持続可能な社会の実現に向けた行動を取ることが求められています。

RoHSが始まった背景

RoHS指令の制定背景には、欧州における環境問題への取り組みが大きく関わっています。特に、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、欧州各地で廃棄物の不適切な処理が原因で起こった地下水の汚染問題は大きな懸念となりました。

廃棄された電子・電気機器から漏れ出る有害物質は、不適切に処理された場合、土壌や地下水を汚染します。特に、鉛、カドミウム、水銀などの重金属が地下水に混入すると、人間の健康や生態系への悪影響が懸念されます。地下水は多くの地域で飲料水として利用されるため、汚染が進行するとその影響は計り知れないものとなります。

欧州連合は、この問題の深刻さを認識し、電子・電気機器の製造段階からこれらの有害物質の使用を制限することで、廃棄物による環境汚染を未然に防ぐ取り組みを進めることとなりました。そうした背景から、2003年にRoHS指令が制定され、2006年から施行されることとなったのです。

このRoHS指令の制定は、廃棄物問題を単なる「廃棄段階」の問題としてではなく、製品の「生産段階」から取り組むべき課題と捉え、総合的な環境対策を進める欧州の姿勢を反映しています。

【一覧】RoHS指令規制対象有害物質

RoHS指令により規制される物質は以下の10種類です。

 

規制物質 主な用途
鉛(Pb) 蓄電池、金属の快削性向上のための合金成分などに使用。
水銀(Hg) 蛍光灯、バッテリー、体温計などに使用。
カドミウム(Cd) バッテリー、塗料、安定剤などに使用。
六価クロム(Cr6+) 金属の防食コーティングなどに使用。
ポリ臭素化ビフェニル(PBB) 電子機器の難燃剤として使用。
ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE) PBBと同様、難燃剤として使用。
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) プラスチックの柔軟剤などに使用。
フタル酸ブチルベンジル(BBP) プラスチックの柔軟剤などに使用。
フタル酸ジブチル(DBP) プラスチックの柔軟剤などに使用。
フタル酸ジイソブチル(DIBP) プラスチックの柔軟剤などに使用。

RoHS指令対象の製品

RoHS指令の対象となる電気・電子機器の基準は、「定格電圧AC1000V、DC1500V以下」のものと定められています。具体的には、現時点で下記11カテゴリーに分けられています。

No. 対象製品 製品例
1 大型家庭用電気製品 冷蔵庫、洗濯機など
2 小型家庭用電気製品 掃除機、アイロンなど
3 情報技術・電気通信機器 パソコン、電話など
4 消費者用機器 ラジオカセット、ビデオカメラなど
5 照明機器 ランプ類・照明制御装置など
6 電気・電子工具:電気ドリル 電気ドリル・ミシン・はんだ用具など
7 玩具など ビデオゲーム・スロットマシーンなど
8 医療関連機器 放射線療法機器、心電図測定機、透析機器など
9 監視・制御機器 煙感知器、測定機器、サーモスタットなど
10 自動販売機 飲用缶販売機、貨幣用自動ディスペンサーなど
11 上記に含まれない電気電子機器

RoHS適用除外される有害物質

規制物質項目の一つである鉛に関しては一部の用途での使用が許可されています。これはRoHS指令には特定の有害物質の使用を制限する内容が明文化されており、規制対象の有害物質すべてが全面的に禁止されているわけではないからです。この例外として許可されているのは、「技術的・化学的に代替が不可能な用途」に限定されています。具体的に適用除外となっている「鉛」の用途は以下の通りです。

鋼材に含まれる鉛:0.35wt%まで
アルミニウムに含まれる鉛:0.4wt%まで
真鍮に含まれる鉛:4wt%まで

この適用除外リストは固定されているわけではなく、技術進化や新しい研究結果に基づき変更される可能性があるため、これらの例外措置は、代替物質が見つかるまでの一時的なものであり、時限措置として定められています。その期限が来ると、EUではその継続か廃止かを再検討します。実際、過去には「六価クロム防食剤」は、代替品が確立されたために適用除外リストから取り除かれました。今後も新たな技術や代替品の出現に伴い、このリストは更新されていくでしょう。

REACH規制やWEEE指令との違い

環境の保護と人々の健康の保護を目的としたEUにおける化学物質や電子機器の環境への影響に関する法律や指令として、RoHS指令の他にREACH規制やWEEE指令がよく知られていますが、その取り組む範囲や規制の内容には大きな違いがあります。よく混同されて考えられますので、ここでそれぞれの規制の特徴について整理します。

REACH規制

REACH規制は「人の健康と環境の保護」や「EU化学産業の競争力の維持向上」を中心とした規制であり、物質の登録義務、認可申請義務、使用制限義務、情報伝達義務の4つの主な義務を事業者に課しています。この規制の下で考慮される物質には、通常の物質だけでなく、調剤や成形品中の物質も含まれています。

RoHS指令との主な違い:

対象範囲の違い:
RoHS指令は電気・電子機器の製造に関わる特定の有害物質を対象としています。一方、REACH規制は、あらゆる産業や製品で使用される化学物質全般を対象としており、その範囲はかなり広いです。

目的の違い:
RoHS指令の主な目的は、電子・電気機器からの有害物質の流出を防ぐことにあります。一方、REACH規制は、化学物質の生産から使用、廃棄までのライフサイクル全体を通じて、人や環境へのリスクを最小限に抑えることを目的としています。

義務の違い:
RoHS指令は、製品の製造過程での特定の有害物質の使用制限に関わる義務を中心にしています。一方、REACH規制は、物質の情報伝達、評価、認可、制限など、より広範囲にわたる義務を事業者に課しています。

適用する事業者の違い:
RoHS指令は主に電気・電子機器の製造業者に影響を与えますが、REACH規制は、物質や調剤、成形品を製造・輸入する全ての事業者に関係しています。

WEEE指令は、電気・電子機器の廃棄処理を中心に考えたものです。具体的には、廃棄された電気・電子機器を適切に分別・回収し、再利用やリサイクルを促進することを目的としています。この指令により、製品の種類によってリサイクルの手法や目標が設定され、製造業者は製品設計の段階からこの指令の要件を頭に入れて考慮する必要があります。

RoHS指令との主な違い:

焦点の違い:
RoHS指令は、製品の製造過程での有害物質の使用を制限することに焦点を当てています。一方、WEEE指令は製品の廃棄やリサイクルの過程を重視します。

目的の違い:
RoHS指令は、環境や人の健康に有害な物質を制限・削減することを目的としています。WEEE指令は、電気・電子機器の廃棄物の量を削減し、再利用やリサイクルを促進することを主眼としています。

実施の段階の違い:
RoHS指令は、製品が市場に出る前の、製造段階においての対策を求めています。WEEE指令は、製品の寿命が終わった後の、廃棄やリサイクル段階に関する対策を中心に考えています。RoHS、REACH、WEEEは異なる目的と対象を持ちますが、環境保護と人々の健康の保護が共通の目的で結びついています。

頑張る皆さんにとって、RoHS指令は大切なポイントとなります。欧州市場はチャレンジに満ちた場所であり、RoHSの対象物質や例外事項を知っておくことは、そのチャレンジを乗り越える手助けとなるでしょう。また、WEEE指令やREACH規制とともに、環境と安全に配慮した国際的なスタンダードが広がっています。日本の企業としての優しい一歩を、これらの規制の理解から始めてみてはいかがでしょうか。

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